リーダーは部下よりも知識や経験があるため、高い視点で仕事を見ることができます。
部下が虫の眼の視点であるのに対し、リーダーは俯瞰的な鳥の眼の視点で見られますので、気づく点も多く出てきます。
だから、つい多くのことを伝えてしまうのです。
リーダーAさんは非常に優しい性格で、相手にきちんと指示が伝わるように心がけていました。
マニュアルをつくると非常に素晴らしいものができあがります。
彼のつくった業務マニュアルのおかげで、アルバイトへの指示が非常に楽になったとも言われていました。
一方で、彼は直属の部下から指示が分かりづらいと言われていたのです。
「まどろっこしい」「何を言っているか分からない」のだそうです。
そのうち、部下から反発されるようになり、チームへの状態も悪い方向へ行きはじめてしまいました。
「相手が誤解しないようにいろいろ伝えなくては」と思っていると、指示の量が多すぎてしまうのです。
細部にこだわりすぎてしまうため時間もかかり、部下も聞いていられなくなります。
挙句のはてには、話の全体像が理解できなくなったり、重要なポイントを外してしまったりするのです。
特に次のように考えてしまう方は、話が長くなる傾向にあります。
1.相手が理解できているか心配で仕方がない
部下にはじめてさせる仕事であったり、かつて失敗した仕事に再挑戦させる際は、慎重になります。
細かいところまで丁寧に教えようとしてしまいます。
丁寧なのはいいですが、前項でも述べたように伝えすぎてしまうと、焦点がボヤケテしまうのです。
結果、せっかくお互いの貴重な時間を使っているのに、部下はリーダーが何を話したかったのか理解できないのです。
あまりいいたとえではないかもしれませんが、会社の50周年記念パーティーのようなレセプションで祝辞を10分近くダラダラと読み上げたお偉方のお話を、「長いな」という感想しか残っていない。
話の内容が全然残っていない、何を話していたか覚えていない、なんていう経験はありませんでしょうか。
これでは、まったく意味がなくなってしまいます。
そうならないためにも、話す前に「要するに」のひと言でこれから話すことをまとめられるようにしておくといいでしょう。
「すべて伝えなくてはいけない」と思う人は、部下が困ったら大変だという気遣いができる優しい方なのかもしれません。
もしそうだとしたら、その優しさで少し視野を広げて、「多くのことを伝えようとしているのは、相手の時間を無駄に奪っていることになる。だから失礼なんだ」と頭を切り替えるといいでしょう。
2.部下に拒絶されるのを恐れている人
ひと言で物事を言えない人の中には、内心、部下から拒絶されることを恐れている人もいるかもしれません。
「やっぱりいいや」「ちょっと無理です」「それはできません」という答えが返ってくるのが怖いから、結論をどんどん後回しにしたり、話の途中で聞いている人の顔色を窺って話を変えたりしてしまうのです。
仮に、リーダーが話した意見に対して部下の考えが「NO」であっても、意見が違うことが早い時点で明確になれば、その時点でお互いの意見の乖離を確認して、代替案を考えたり、新たな手を打ったりすることもできます。
リーダーの意見に対して、部下が「違うのに」と思いながら聞いている。
しかし、リーダーであるあなたの最終的な意見がなかなか出てこない。
回りくどくて、余計な話をしている。
それでは時間の無駄になってしまいます。
不要な言葉を削除するのも、部下への優しさとも言えます。