管理職・リーダーのコミュニケーションスキル、雑談上手になる心構え

管理職・リーダーのコミュニケーションスキル 部下との関係を築く雑談術について

これから、部下との信頼関係を築くためのコミュニケーションにおいて、軽視されがちな雑談・コミュニケーションについて解説します。ビジネス上の人間関係であれど、ひと対ひとの付き合いにおいて、雑談でのコミュニケーションでも信頼関係を築くことはできます。雑談についての心構え、考え方、実践的なテクニックを解説いたします。

管理職・リーダーが意識したいこと「雑学博士が雑談上手とは限らない」

かつて私は会話がいつも一往復で終わってしまうという悩みを抱えていました。

そこで雑学をたくさん仕入れるのがよいと思い、雑学大百科などの本を読みました。

早速、雑学百貨で得た知識を披露しました。

イベントを開催していた時、会場のバックヤードで取引先のAさん、同じ部署の後輩Bくんと弁当を食べていた時のことでした。

その時のお弁当が、幕の内弁当だったのです。

私は一気にテンションが上がりました。

なぜなら、ちょうど前の日曜日に「幕の内弁当」についてのネタを仕入れていたからです。

私「今日は幕の内弁当なんですね」

Aさん「そうですね。美味しそうですね」

私「幕の内弁当って、江戸時代に芝居見物の際に食べる弁当として広まったって知ってます?」

Aさん「初めて知りました…」

私「なんで幕の内弁当っていう名がついたかというと、舞台の幕が下がり、次の幕が上がるまでを「幕の内」「幕間(まくあい)」といって、その間に幕の内側で役者が食べるからなんですよ。意外に歴史がありますよね」

Aさん「ええ……(適当に合わせている感じ)」

私「もう1つ説があって……」

Bくん「とりあえず食べましょうか……」

Aさんからすると私の会社はクライアント先です。

よって箸を止めて話を合わせていましたが、本当は早く食べたそうでした。

B君はそれを感じ取ったのでしょう。

その時は、なんでせっかく面白い話をしているのにつながらないのかなとしか思いませんでした。

今回はたまたまだと思い、また別の機会で、パーティに参加したときのことです。円卓でのパーティだったのですが、デザートでグレープフルーツが出てきました。私の胸はドキドキし、テンションが上がりました。ちょうど雑学大百科でグレープフルーツのネタを得ていたからです。

早速、話を始めました。

私「グレープフルーツって、なんでグレープがつくか知っていますか?全然似てないのに」

相手「いえ」

私「グレープフルーツは1本の枝に房状に実り、その様子がブドウにそっくりだからなのです」

相手「へえ。そうなんのですね(相手は笑顔も見せない)」

私「……(あれ、おかしいな)」

全く話が盛り上がりません。

それどころか、相手は逆どなりの人と会話を始めてしまいました。

逆どなりの人は、そんなに面白そうなことを言ってはいません。むしろ、あまり話をしておらず、どちらかというと聞き役でした。

不思議でたまりませんでした。私と話している方がいろいろな雑学知識も得られるのに。話題豊富な人のほうがいいはずなのにな。

なぜこうなったか今ならわかります。

私は相手の感情をいっさい無視して、「ただの教えたがり」になってしまっていたのです。

私は雑談・コミュニケーションに関する講演やセミナーをしていますが、話をするネタがないけどどうすればいいかと相談に来る人もいます。

たいていは「何を話すか」ばかり考えています。

それよりも大切なことは、相手に話をさせることなのです。

雑学を知っていることは悪いことではありませんが、大切なのは相手に話しやすくなってもらうことです。

管理職・リーダーは 「プレゼンターよりインタビュアーを目指そう

若い頃の私は、人とのコミュニケーションにおいて、「いかに自分が多く話をするか」が大切だと思っておりました。

営業でいえば、自社や企画、商品の素晴らしさ、プライベートでいえば自分自身の素晴らしさをPRすることに最重点を置いていました。

アポイントを獲って訪問をすると、まずは丁寧に1ページ目から会社概要を10分以上かけて説明します。

さらには企画の内容、新卒で入ったのは旅行会社でしたので、企画した観光地の概要、名物料理を説明します。

なお当時はまだ紙ベースが主体でしたので、旅館のパンフレットも持っていき、丁寧に説明します。

30分以上は必ず、時には1時間近く一方的に話していることもありました。

最初のうちは、訪問先の方も相づちを打ってくれたり、笑顔で接してくれますが、最後のほうは、的当な相づちで、早く終わってほしいなという表情になっていることも少なくありませんでした。

今となれば、非常にダメな営業だったなと恥ずかしく思います。しかし、当時はお客様もずっと聞いてたから疲れてしまったのだろうと思っていました。

面談が終わると、「今日は話せたぞ」と達成感満載でした。

しかし、満足感とは裏腹に、先方から返ってくる返事は「今回はJ社さんにお願いすることにしました。申し訳ございません」と、同業他社へ決まってしまってばかりで、営業で12連敗してしまいました。

そんなある日のことでした。

その日は中規模の団体旅行を扱っているB社と面談のアポイントが入っていたのですが、非常に体調が悪く、できるだけ簡潔に面談を終わらせたいなと思っていました。

そこで、いつもとは違った面談のやり方をします。

会社概要はざっと説明し、企画も簡単に概要だけの説明にとどめました。

すると、お客様から積極的に話しだします。

「この温泉、海が見える露天風呂なんだよね、いいね」と旅館のパンフレットを見ながら、話しだします。

体調が悪かった私は「そうなんですよ。ご存知でしたか?」とだけ返します。

すると、先方は「知っているよ。この旅館、3年前にゴルフ仲間と行ったんだよ」と楽しく話し始めます。

さらには「魚が美味しくてさあ、そうそうここのゴルフコースは割と初級者でもいいんだよ」などと続きます。

私はただ相づちだけ打っていました。

この日の会話は私が2割聞いて、先方が8割話していました。

いつもは自分が8割話そうと思っていたので、まるで逆です。

先方が一方的に話した後、何と驚くことを言われます。

「吉田さん、今回は御社にお願いすることにするよ」

「今回はあまりきちんと説明してないのになぜだろう?」

 会社への帰り道、そのような疑問が頭をずっとよぎっていました。

 実はこの後、プライベートでも、不思議なことが起こりました。

 不謹慎な話かもしれませんが、私は20代の頃、毎週のように合コンをやっていました。

 合コンでは、常に自分のすごさをPRしていました。正確にいうと、全く凄くないのにすごく見えるようにPRしていたのです。

たいては上手くいきませんでした。

その場で電話番号を教えてもらっても、実際にかけてみると、本人らしき人が出てるのに、「Bは只今出かけております」とガチャンと切られるや、時には「おかけになられた電話番号は現在使われておりません」なんてアナウンスが鳴ることもありました。

ところがやはり体調の悪かったある金曜日の夜の出来事です。

その日は早く帰って寝たいなと思っていたのですが、悪友からの夕方の電話で「今日の合コン、1人向こうが増えたみたいなんだよ。さすがにこちらが2人いないのはまずい。頼むよ」との頼みに、「じゃあ、1次会だけ顔出すよ」と参加することにしました。

その日はつらかったので、グループでの会話に「うん、うん」とうなずき、時に笑っているだけでした。

何とか1次会だけ参加し、皆が2次会に参加するのに帰ることにしました。

すると、一緒に駅まで帰るという人がいました。

そして何とその方と、再度お会いすることになったのです。

実はあまり話さないほうがいいということに気づきました。

それから数年経ち、コミュニケーションを学ぶようになって、大切なのは「自分が話す」のではなく、「相手に話してもらう」ことだと知りました。

初対面の方やまだ知り合って間もない方には、つい自分から話をしてしまいがちです。

いわゆるプレゼンターになってしまいます。

しかし、本当に雑談やコミュニケーション上手な人はインタビュアーなのです。

相手にインタビューをして、話を引き出すのが上手な方なのです。

名詞会のタモリさんなんかいい例です。

インタビュアーは、相手のすごいところを聞くことはあっても、自分はいかにすごいかを語ったりしません。

昨今、私はメディアの取材をいただくことが増えました。

皆さまプロの方々ですから、私が話しやすいように気を遣っていただけます。

私が話す内容にも「そうですよね」「確かになと思います」など相づちを打っていただけます。

心地よいのでつい話過ぎてしまうことも多々あります。  自分をPRするプレゼンターではなく、いいインタビュアーを目指しましょう。

管理職・リーダーが意識したいこと「アドリブで雑談してはいけない」

雑談・コミュニケーションが苦手という人の中には、過度に緊張してしまうという人もいます。

また、本題では何を話そうか考えているのに準備していないという人もいます。

実は雑談には準備が必要です。

面談の前には必ず相手の会社のことをHPなどで調べるかと思います。

昨今ではフェイスブックやTwitter、インスタグラムなどのSNSを使っている人も増えてきていますので、相手のお名前を検索すると情報を得ることができるかと思います。

出身地、出身の大学や高校、好きな食べ物、趣味などが見つかるかもしれません。

もちろんいきなり「フェイスブックで見たのですが」なんて言うと、相手も警戒してしまいます。

余談ですが、私は講演の時、主催者から「先生、先週は新潟に行っていたのですね。フェイスブックで見ました」なんて言われますが、これは問題ありません。

主催者の方々の名誉のためにつけ加えておきます。

しかし、商談をするビジネス仕様の相手の場合、「山田部長、先週末楽しそうでしたね。伊豆でゴルフの後、海沿いの北川温泉。私も以前1度だけ行ったことあるのですが、また行きたくなりました」などと持ちかけたら、盛り上がる可能性はなくはありませんが、同時に相手に警戒されたり、気分を害される危険性もあります。

これは止めておいたほうがいいでしょう。

だからといって、アドリブで雑談をしようとしてもなかなか上手くいきません。

少し話は変わりますが、私は年に130回くらい講演やセミナーなどを行います。

毎日のように講演が続く時がありますが、最初の1分は今でも緊張してしまいます。

しかし、緊張も最初の1分で何を言おうかを決めているので、乗り切れています。

実は雑談もコミュニケーションも同じなのです。

ノープランになってしまうと「最近いかがですか?」と相手が答えにくいぼやけた質問をしてしまったり、形式ばった「今日は雨降りますかね?」と一往復で終わるような質問をしてしまいがちです。

ちなみに天気の話をふることは悪いことではありません。詳しくは後ほどお話ししていきます。

雑談は準備しておくものです。

緊張して上手く話せない人もノープランだからそうなってしまうのです。

具体的には次の2つを用意しておくといいでしょう。

  • ①訪問先には20分前に着くようにしましょう

だいたいアポイントの10分前から3分前くらいに訪問するのがいいと言われていますが、できれば20分前に現地に着いておくといいでしょう。

 現地に着いたら、近所の様子を見ておきます。

 美味しそうな定食店さんがあるとか、行列のできている中華料理店があるとか、カフェがあるとか、コンビニがあるとか、昼食に行く店のネタを仕入れておくのです。

 駅に近いところだったら、駅チカのネタでもいいでしょう。

 また郊外であれば、駅にあるオブジェ、お祭り、花火大会や甲子園出場などの垂れ幕などもチェックしておくといいでしょう。

  • ②最初のひと言を準備しておく

先ほど私の講演の話でも書きましたが、一番緊張するのは最初の第一声です。

「失礼します。リフレッシュコミュニケーションズの吉田です。今日はお時間をいただき、ありがとうございます」」という言葉と雑談で触れておきたいものを3つほど用意しておくのです。

 会社への訪問とともにパーティでの雑談・コミュニケーションも難しいと考える人もいます。

 これも3つくらい最初の声かけパターンを用意しておけばいいのです。

 「はじめまして。どなたのご紹介で今日はいらっしゃったのですか?」

 「場所すぐわかりました?私は迷ってしまいました」

 「こういった会はよくいらっしゃるのですか?」

雑談はアドリブだから難しいと感じてしまうのです。

もちろん上級者の方々や元々得意な方は別かもしれません。

私も今では雑談術のセミナーの講師をしてはいますが、元々は言葉に詰まっていました。ルーティンワークのようにしたから慣れてきたのです。

これらは社外のお客様を相手にする場合に限りません。社内の同僚、上司、部下に声かけするときも、最初のひと言を決めてルーティンワークにしてしまえばいいのです。

 ただし、準備をしておくことは大切ですが、注意点もあります。

  • ①トークをガチガチに準備しない

最初の声がけトークにとどまることなく、どのような話をしようとシナリオを完璧にし過ぎないことです。完璧にしすぎてしまうと、一方的に自分から話す量が多くなってしまいがちです。

また、そもそも雑談は話が脱線しがちです。むしろ雑談は本題ではありませんから、脱線するのがほとんどです。むしろ脱線し、相手がどんどん話してくれたことで、聞き手であるこちらに良い印象を持つようになります。かつ、情報を得ることができます。

それなのにあまりにガチガチにしてしまうと、脱線した際に頭が真っ白になってしまいます。一番いいのは逸れたケースのことを想定しておくことですが、なかなか難しいでしょう。

よってガチガチにせず、逸れたら逸れたでいい。相手の反応がよくなければ無理に雑談を続けなくていいとリラックスして臨むようにしましょう。

  • ②欲張らない

これは営業職の方に多いのですが、例えば今日はどんな話を聞こう、質問しようとプランを多く立てすぎてしまうことです。また、リーダーの方は「これを聞いてこい」とああまり多く指示しないでください。

聞かなければならないことを多くしてしまうと、全部聞いてくるという目的ばかりが頭に残り、お客様の話に集中できなくなってしまいます。 よって話したいこと、聞きたいことはできれば1つ、多くても3つ以内にとどめておくようにしましょう。

管理職・リーダーは「どんな相手からも長所を見出そう」

人は長所の5倍短所が見えるといわれています。

私は普段、リーダー向けの研修で「今、一番やりとりに困っている部下の方を一人選んでいただき、その方の短所を5分以内で挙げられるだけ挙げてください」と、課題を出します。

すると、たいてい10近く短所が挙がります。一方、では次に長所を挙げてくださいと言うと、あまり挙がりません。

人は、無意識でいると相手の短所ばかり見えてしまうのです。

これは上司部下に限らず、他の人間関係でも当てはまります。

よく知らないのに「こういうタイプの人は苦手」という印象を持っている人も少なくないでしょう。なんか威圧的な人だ、馴れ馴れしい人だ、神経質そうな人だなど、確かに当てはまるものもあるかもしれません。

しかし、中にはあまり話していないのに、イメージばかりが先行してしまうこともあるでしょう。特にその方の外見に似た方と会ったことがあって、その人へ悪い印象があると、「あの人もかつてのAさんのようなタイプのような気がする」と思って遠ざけてしまうのです。

特に過去に散々怒鳴られた先輩がいたとします。その人と似ているからと苦手意識を持ってしまうのです。過去に、犬に噛まれた人が、犬を見ると逃げ腰になるのと同じです。ちなみに私がそうです。

かつて、私はこんな経験をしました。

旅行会社時代、飛び込み営業をしていた時のことです。

その会社の受付には「営業お断り」との貼り紙がありました。

それまで私は「営業お断りの貼り紙は、営業されると買ってしまう、実は営業に弱い人が貼っているのだ」と思っており、時に本当にお忙しい人に怒られることはありましたが、気にせず、営業に行っておりました。

先方の受付で「こんにちは。この辺をご挨拶で回らせていただいている会社です」と大きな声を出すと、非常に威圧感のある身体も大きく、強面の方が出てきました。

びっくりはしましたが、怯むことなく、声をかけました。

以下はその方とのやり取りです。

吉田「失礼します。この辺の地域をご挨拶で回らせていただいております○○の吉田と申します」

相手「挨拶…挨拶って何だ?」

吉田「挨拶させていただき、弊社を覚えていただければと思いまして」

相手:「表の貼り紙見たか?(かなり怖い顔で)」

吉田「いや、特には…(何とか取り繕うとする」」

相手「ふざけるな。挨拶ってのは営業ってことだろ。営業禁止って貼り紙見なかったのか?」

吉田「はい。すみません…」

これだけでは終わらなかったのです。

何とボールペンを投げられました。

当たらずにすみましたが…

それまで先輩に営業中に水をかけられたことがあるというのを聞いたことがありましたが、それに近いものでビックリしました。

その日は正直、営業活動を続行するのが辛く、喫茶店で休んでいました。

本当はいけないのですが、今なら時効にしてもらえるかなと思っています。

しかし、そんな辛いことも、関係のよいお客様を訪問したり、コンペに勝ったりしていくうちに記憶から薄れていきます。

そんなこんなで3週間も経過した頃、今度は別の地域で飛び込み営業をしていました。

今度は「営業お断り」の貼り紙はありませんでしたが、非常に圧迫感のある前回ボールペンを投げられた方と似たような雰囲気の方が出てきたのです。

防衛反応が働き、このような言葉で挨拶をしました。

「○○の吉田と申しますが、今日はこの地域を挨拶回りさせていただきます。名刺を置いていきますが、よかったらチラシ等をご覧いただければと思います」

営業としてはやってはいけないことをやっていたのです。

チラシだけ置いてすぐに帰ろうとしていたのです。

このような営業がバレると「お前、営業マンとしての価値はないな。お前の代わりにポスティングのアルバイトを1人雇っているのと同じだ」と上司に叱られます。

「そもそも、このような圧迫感のある人が、買ってくれるはずないだろう」と思っていましたし、またボールペンを投げられたらたまらないなと思っていた私は、後ずさりします。

すると置いてあった北海道のパンフをその方はじっと見ています。

相手「そうだ。北海道ともう1つ九州のパンフもあれば、今度もらえるかな?」

私「わかりました。会社に帰ったらお送りします(早くこの場から去りたい)」

相手「あっ、そうだ。それ以外でグアムとか他の地域のものも欲しいから。今、まだ時間ある?」

営業に来たのだから時間はあるに決まっています。そのお客様からすると、私はそそくさと立ち去ろうとしていたからそんな聞き方をしたのでしょう。

何と席に座っての商談になったのです。

結果、後日企画を提出し、受注につながりました。

その方の表に情は笑顔もありました。

前置きが長くなってすみません。

お伝えしたかったのは、人を見た目で判断してはならないということです。

少し前に「人は見た目が9割」なんて話もありましたが、これは見られる側からの意識です。

決して、見る側はそう判断してはなりません。

雑談・コミュニケーション上手になるためには、相手に興味を持つこと、それには相手を嫌いにならない、悪い印象を持たないということです。

そもそも外見は第一印象ですが、見る側には第二印象の主観が入ります。

強面という第一印象も、Aさんにとっては「怖そう」という第二印象かもしれませんが、Bさんには「しっかりしている方」という印象もあるかもしれません。

今まで生きてきた中でお会いした人の印象が影響を及ぼしているからです。

そもそも、短所は長所と表裏一体です。

例えば、「威圧的な」という短所に思える印象は「どっしり構えていて実直」ともいえます。またよく初対面で出てくる短所の「馴れ馴れしい」という印象も、「相手が緊張しないように気を遣っている」という長所にもとれます。

このように短所は視点を変えると長所になるのです。

短所を長所に視点を変えて変換することを心理学用語では「リフレーミング」と呼んでいます。

雑談上手な人は、このリフレーミングが得意なのです。

・細かそう⇒よく気がつく
・無口な人⇒聞き上手
・無反応⇒真剣に聞いていて反応できない
・主張が強い⇒はっきりしている
・疑り深い⇒慎重である

どんな人からも長所を探すようにしましょう。長所を探そうとすれば、雑談・コミュニケーションも積極的にすることができるでしょう。

管理職・リーダーが意識したいこと 「しぐさに注意しないと、すべてが台無しになる」

先ほど、人を見た目で判断してはいけないと書きましたが、逆に自分は見た目にも気を付けなければなりません。

自分は見た目で判断しないようにしても、相手は見た目で判断してしまうからです。

例えば、靴店に行ったとします。

最初に入ったショップで対応いただいたAさん、きちんとした対応だったのですが、表情が乏しく、少しとっつきづらい感じがしました。

いい商品は見つかったのですが、まだ決めずに他の店も見てみることにしました。

次に行ったショップのBさん、この方は笑顔が素敵で、非常に感じのよい方でした。

対応も非常によいため、結局この店で購入することにしました。

購入した商品ですが、実はAさんのお店で迷っていた商品でした。

同じ商品を前の店では断ったのに、次の店では買ってしまったのです。

このような経験がおありの方もいらっしゃるかもしれません。
昨今では、商品やサービスはすぐに模倣されてしまいます。
購入の決め手は営業マンや販売員の人柄なんてことも少なくありません。

このBさんのように、感じがいい方は相手に好感を持ってもらえます。

心理学者メラビアンは「人は何に影響を受けるか」ということを調査し、「視覚情報が55%、聴覚情報が38%であり、話の内容はたった7%しかない」と結論づけました。

これをメラビアンの法則といいます。

何だ、話の内容はたった7%しか影響ないのか?

だったら、雑談が上手くなってもあまり意味がないのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。

話の内容は大切です。しかし、それ以上に視覚情報・聴覚情報の影響が強いので、どんなにいい話をしても2つの印象が悪ければ台無しになってしまうということです。

では、どの部分に気をつけていけばいいかをご紹介していきます。

視覚情報

55%を占める見た目ですが、イケメンでないといけないというわけではありません。

相手の気分を害しない外見にすることです。

具体的には次の4点です。

・表情を豊かにする

具体的には相手の気持ちに寄り添った表情をすることです。

相手が楽しそうに話しているときは笑顔、つらそうな話をしてきたら悲しそうな表情をつくることです。

初対面に関しては笑顔が無難でしょう。

ここで1つお伝えしておきたいことがあります。

真面目な顔、いわゆる真顔は相手に警戒心を抱かせたり、悪い印象を与えてしまいます。

私は普段講演をしていると、たまにエンジンが入って真顔になります。

すると、アンケートで怖い顔をしていたと書かれたことがあります。

決して怒っていたわけではない。ただ真面目な顔をしていただけです。

相手への伝わり方が大切ですから、真顔はやめたほうがいいでしょう。

・アイコンタクト


相手と目を合わせることです。そっぽを向くのは論外ですが、例えば後輩が話してかけてきたとき、パソコンを見ながら生返事をしてしまったなんて経験をお持ちの方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。

この場合、手を止めて相手に目を向けなければなりません。

なお、相手と目を合わせるのが苦手な方は、相手の眉間あたりを、相手の話す語尾に合わせてちらっと見るでも構いません。

なお、相手を無表情でじっと見ることは危険です。立場の弱い人相手にそれをやってしまうと「蛇に睨まれたカエル」のようになってしまいます。パワハラともとらえられかねません。

・相づち


相手の目をじっと見たままだと圧迫感がありますが、相づちを入れることでだいぶ印象が変わります。うなずきもそうです。

私は普段講演やセミナーなど大勢の前で立ってお話しをする機会が多くありますが、開始して間もない段階で相づちやうなずきをしながら聞いてくれている方を見つけると、その方に目を向ける回数が自然と多くなります。

それだけ相づちやうなずきは相手に与える印象がいいのです。

・目線の高さを合わせる


研修や講演の仕事をしているとき、私より年上の受講者ばかりの時もあります。そのような時、受講者の方々の中には少し斜に構えた方もいらっしゃいます。そういう時は、演習の時に会場を回って「どうですか?」声をおかけします。

その時、必ずしていることがあります。それはしゃがんで座っている受講者の方と目線の高さを合わせることです。

こうすることによって、相手は偉そうだなと感じなくなります。この目線を合わせた声がけをすると、たいていの方が変わっていただけます。アンケートには親身になって話してくれた先生だったなどと書いてもらえることもあります。

聴覚情報

38%を占める聴覚情報ですが、具体的には「声の大きさ」と「話すスピード」が大切になってきます。

具体的に見ていきましょう。

・声の大きさ


一般的に、声が大きい人は相手に威圧感を与え、小さければ自信がないように見えるもおのです。よって声の大きさは相手に合わせるべきです。
特に小さな声の方を相手にする場合、注意が必要です。

人によっては圧迫感を感じ、話しづらいなと悪い印象を持たれてしまうことがあります。

・声のスピード


何かを早口で話されると、それは軽い内容のように思われがちです。

一方で、ゆっくり話すと相手に伝わりやすくなります。

よって基本的にはゆっくり話したほうがいいのですが、相手が早口の場合、じれったいなとイライラさせてしまうかもしれません。

以前、ある製品を購入した時、買ったばかりなのに故障してしまい、カスタマーサービスセンターに電話をしたことがありました。

するとなかなか電話がつながりません。やっとのことつながったと思ったら、「はい、○○株式会社△△事業部サービスセンター石井がお受けいたします」とかなりゆっくりな声で対応されたので、つい「買ったばかりの○○が壊れてしまって」と大声で強く言ってしまったことがありました。

その方はマニュアル通りの対応をされたのでしょうし、今考えると大変申し訳ないことをしたなと思いますが、何かの故障のように急いで電話をする場合、あまりにもゆっくり話されると、それだけでイライラしてしまいます。

気持ち、相手の話すスピードに合わせるという必要があります。

色々書きましたが、まとめますと、声に関しましては、完璧に相手に合わせることは物理上不可能だと思いますので、気持ち相手に合わせ、悪い印象を与えないようにするといった考えで留めておきましょう。

管理職・リーダーのコミュニケーションでは「否定ワードは封印しよう」

自分の思っていることと違うことを言われると、つい否定ワードを使ってしまいがちです。

A:「今日は少し温かくていいですね。春が近づいているって感じがしますし」

B:「いや、花粉症が始まって。むしろ寒かったほうがいいですよ……」

A:「あっ、すみません……(この人なんか合わないな)」

何だかぎこちない雰囲気になってしまいます。

「しかし」「でも」「いや」などの相手の言葉を否定してしまうと、相手もこれ以上は話さなくていいやと思ってしまうでしょう。

確かにBさんは花粉症が始まってイヤかもしれませんが、否定言葉は使わないことです。

イエスバット法という、一度相手の意見を受け止めてから、「しかし」「でも」などを使って自分の意見を述べるやり方があります。これだと否定言葉を使ってはいますが、一度イエスで受け止めているのでいいのではないかとの意見もありますが、やはり「でも」の印象が強く残ってしまいます。

A:「今日は少し温かくていいですね。春が近づいているって感じがしますし……」

B:「そうですね。温かくていいですね。でも、花粉症が始まってつらいですよ」

できれば、肯定の言葉を使ってから、自分の意見を述べるようにしたいものです。

イエスアンド法を使うのです。

これは相手の意見を受け止めてから、自分の意見を伝える方法です。

イエスアンド法ならば、先ほどの事例ではこのようになります。

A:「今日は少し温かくていいですね。春が近づいているって感じがしますし……」

B:「そうですね。温かくていいですね。ただ少し鼻がムズムズしてますね。花粉症が始まったかもしれませんね」

A:「それは大変ですね」

相手も話しやすいでしょう。

では、ここで他にも使ってしまいがちな否定ワードをご紹介していきます。

1.「そうかなあ」

意見に対してあからさまに反対で、しかも話を聞く気がないと暗示している相槌です。相手からするとバカにしているように感じられるかもしれません。

2.「そんなはずはない」

自分の考えと真逆である意見を言われた場合、つい使ってしまいがちです。自分の知識や考え方に自信を持っている場合、あるいは相手がまだ経験も知識も浅い場合には、このような言葉を使ってしまったことはありませんか。

特にこの言葉は相手からすると全否定されているように感じてしまい、危険なワードです。相手はこれ以上話をするのを止めてしまうか、敵対関係になってしまいます。

3.「はあ?」

この言葉は最大の否定ワードと呼んでいます。特に相手がわからないことを言ってきたり、長く要領を得ない言い方をしてきたとき、反射的に使ってしまうケースがあります。

口ぐせになっている方は危険です。

4.「ていうか」

相手の話に納得ができず、強引に話題を変えてしまう相槌です。言っているほうからはあまり強い否定に感じないのですが、言われたほうからすると、否定された感が強く残ります。

これらの言葉は封印するようにしましょう。特に初対面の方に対しては否定をした瞬間、相手の気分を害してしまう可能性もありうるので注意が必要です。

では、逆にこのように相手が全く自分の考えと真逆であった場合、どう対応したらいいのでしょうか。使うといいワードを紹介していきます。

「そんな考え方もありますね」
真逆の意見が出てきても、それを認める、いわゆる受け止める言葉を遣えばいいのです。ここで誤解しがちなのが「受け止める」と「受け入れる」は違うということです。

「受け入れる」となると、相手の意見が全く逆のものでも、それに合わせる、いわゆる「迎合する」ことになりますが。一方で、「受け止める」の場合は、否定も肯定もせず、まずは話を聞いて、その意見を認めることです。意見を認めるだけで、肯定も否定もしません。ここが大きな違いです。

この言葉は決して相手の言ってきた内容を肯定しているわけではないのですが、言ったことの行為自体は肯定しているので、相手の印象を害することもありません。

その他にも「そうでしたか」「あっ!そうか」などの肯定ワードもいいでしょう。

大切なのは①まず受け止める②その後、否定ワードを使わないということです。

もし、真逆の意見などで自分が反対の意見を出したい場合は、「確かに」「そうですね」の後に「一方で、私は」から始めるといいでしょう。こうすればあくまで「私の意見」であって、あなたの言ったことが世間的に間違っていると否定しているように感じないからです。

意見が2つあるといった捉え方をしていただけます。

管理職・リーダーが意識したいこと「すべての人がキーマン」

営業をしていると、よく決裁者に会えと言われます。

確かにその通りだと思います。

しかし、かつて私は決裁者にはいいと言われたのですが、社内で反対に遭い、コンペで負けたことがありました。

たとえば、備品購入の決裁権は部長にあるが、長く継続した取引になると、担当者の部下の方がやり取りをすることになります。

その担当者の方が反対だと、結局決裁者の部長も「じゃ、止めておこう」となってしまうのです。

確かに「誰と話すか」は重要です。

しかし、キーマンだけに気を遣っても、その会社の誰かが反対すれば、取引は中止になってしまうことは多々あります。

それ以来、私は「キーマンは社長かもしれないけど、全員が決裁者」のつもりで動くようになりました。

以前、ある上場企業で社長の秘書をしている方とランチをしながらお話しをしたことがありました。

その企業には私が飛び込みで訪問し、契約を獲得することができていました。

偶然にも共通の知人がいて食事をすることになりました。

「以前はいつも温かい対応をしていただいてありがとうございます」なんて言いながら話が始まったのですが、私はある疑問をぶつけました。

「受付の方が判断しての門前払いって、あるんですか?」

「印象の悪い場合は、社長に伝えたりするんですか?」

すると、ビックリするような回答が返ってきました。

そのようなことは日常茶飯事にあるようなのです。

例えば、あるメーカーがプレゼンに3人で来ました。

せっかく商談がうまくまとまっていたのに、帰り際に、3人がそれぞれ社長と部長のほうだけ向いて挨拶をして帰りました。

こんな時でも、社長が「あの会社どう思う?」なんて聞くことがあるそうなのです。「ちょっと感じが悪いですかね」などと言ってしまったこともあるようで、取引が中止になったこともあるそうです。

一方で、秘書の方にも非常に丁寧で雑談をする方もいるそうです。

「壁の絵が素敵ですね」

「見晴らしがいいですね。ドキドキしてしまいます」

「サッカーの○○選手を広告で使われてますよね」

「今日は休み前で多くの方が面談されていらっしゃいますね。お忙しい中、ご丁寧な対応をいただき、ありがとうございます」

人によって態度を変える人は嫌われます。

逆に、誰にでも丁寧な対応を心がける人は好かれます。

それからは、私は受付の方とお会いした瞬間から面談が始まっていると考えるようになりました。

 秘書の方にお茶を持ってきていただいた際、「必ずありがとうございます」と言い、目に見えるものを話題にひと言雑談を言うようにもなりました。

 こんなこともありました。

私:「あの絵は錦帯橋ですか?」

秘書:「そうなんですよ。実は社長が岩国出身で飾ってあるんですよ」

社長が山口県という情報が得られるわけです。

実はこれは秘書の方だけではありません。

その会社に関係している方、全員から情報は得られるのです。

 駐車場の係の方から「店長はこの時間だったらいつもいるよ」「この時間帯だったら比較的忙しくないかもよ」なんて情報を教えていただいたこともあります。

 意外なところから情報は得られるものです。

 すべての人がキーマンだと思って接するようにしましょう。

 差別はいいことがありません。

管理職・リーダーが意識したい雑談術「ネガティブな雑談よりポジティブ雑談を意識しよう」

かつて私は自分の仕事を初対面の人に紹介したとき、こんなことを言われました。

「旅行会社って、夜は遅いみたいだし、大変ですよね」

「今時、飛び込みですか?」

「営業って大変そうですよね」

「紙媒体を扱っている広告会社なんですか。今時どこもインターネットでしょ」

正直、凹みました。あるいは、「何だ!」と思って腹を立てたこともあります。このように言われた人とは、2度と会いたくないなと思いました。その後、何かの縁でお見かけすることがあっても近寄らないか、あるいは目が合ったら会釈だけで済ませていました。

このような人からすると「裏表がない」「変に俺は飾らないんだ」「正直な意見を述べているだけ」「いい人に見せたって仕方ないだろう。偽善者にはなりたくない」なんていいますが、本当にそうでしょうか。

あるいは、「そんなことでへこたれているようではメンタルが弱いだけだ。反論したいならすればいい」と言う意見の人もいるでしょう。

人それぞれ性格は違います。相手に強く言える人もいれば、言えない人もいます。相手を圧倒するのはよくないでしょう。ましてや初対面です。もしかしたら今後いいお付き合いができるかもしれません。

雑談・コミュニケーション上手な人は、このように初対面で人のことを罵倒しません。私は今まで数多くの成功者の方にお会いしましたが、このように罵倒する人は一人も見たことがありません。

例えば、ある大企業の幹部の方と営業で面談した時はこのようなことを言われました。

「営業の仕事っていいよね。対人能力を磨けるからね。どんな仕事でも対人能力は必要だから。一生モノだよ」

ある世界的に有名なメーカーの人事部長には次のように言われました。

「飛び込み営業か。ファイトあるね。対面で話すのが一番人は安心するしね。一からスタートしていくのって楽しいでしょ」

全然ネガティブ意見は言われません。こちらの気分をよくするのがさすがに上手なのです。このように相手の職業をリスペクトすると、当然相手からもいい印象を持たれるので、人間関係構築ができます。むやみに人の気分を害することは百害あって一利なしです。

相手の職業を聞いたときに賞賛する言葉は自然に出てくるのが望ましいですが、慣れないうちはパターン化しておくといいでしょう。

例えば、販売職の方に対しては、「販売の仕事をされてるのですね。販売の仕事はたくさんの方と接することができるので、魅力ありますよね。人間としての幅が広がりそうです」と、経理の方には、「経理の仕事をされてるのですね。経理の方は数字に強いイメージがあります。ビジネスマンとして経理のことは知っておかないといけないですよね」などと伝えるといいでしょう。

ただし、このようなことを書いていても、つい否定的になってしまうケースはあります。それは自分自身が上司であったり、経験をたくさん積み、先輩になったときです。

相談してくる人が自分より経験も知識も浅い場合、例えば今の私の場合でいうと、「いや、そんな考えじゃ甘いよ」「講師の仕事で食べていくのはそんな簡単なことじゃないよ」などと口走ってしまいそうになることもあります。

そんなとき、自分が駆け出しの頃を思い出してみましょう。

「そんなこと言われたら嫌だったな」と思い出せるでしょう。

自分がされてイヤだったことは、他人にするべきではありません。

管理職・リーダーが意識したいこと「文章も言葉も短文で簡潔に」

 接続詞を多用して、一文を長く書く人がいます。長文を書いていると優秀そうに見えるからでしょうか。かつての私もそうでした。しかし、実は一文は短いほうがいいのです。難解で読みにくい文章より読みやすい文章のほうがいいからです。

同じように言葉も短く区切って話したほうがいいのです。

 式典の祝辞などで偉い人の長々と続く言葉に「早く終わらないかな」「長くしゃべっていたけど、何が言いたいのかわからなかった」なんて思ったことがある方は少なくないでしょう。

 「この度は弊社も20周年を迎え、え~……おかげさまで従業員の数も100名を超え、え~売上も15億円を超えまして、今期も無事黒字で終わりそうで…」

 このような会話を耳にし、お偉いさん相手だから面等向かっては言えないけど「何がいいたんだか、わかんないんだよ」と心の中で叫びたくなります。

 長い話は伝わらないのです。

 このような場合、次のように変えれば、多少リズムも生まれ、聞きやすいのではないでしょうか。

「この度は弊社も20周年を迎えました。おかげさまで、従業員の数も100名を超えました。売上も今期は15億円を超え、無事黒字で終わりそうです」

 変に接続詞でつながず、1つの文を短く区切るようにしましょう。

 ただし、発表や講演はこのように文章を短く、5分とか7分と決まった時間話せばいいですが、雑談は会話のキャッチボールです。片方が長くしゃべりすぎてもいけません。サッカーのパスのように速く回していかないといけません。

 親しい人や相手に教えを請う場合を除き、普通の会話の場合、相手が一方的に1分以上話していると、聞く側は疲れてきます。

 例を見てみましょう。

 電車が遅れ、会社の最寄り駅で同僚と遭遇

A「電車遅れて大変でしたね」

B「本当だよ。俺なんかさあ、途中の○○で降りてタクシーで行こうとしたんだよ。乗り場にも10人ぐらしいかいないからさ、大丈夫と思ったんですけど。それが1時間待っても来ないんだよ。それでさあ、バス乗り場を観てたら、バスのほうが早そうなんだよ。しょうがないから途中でバスの列に並んだけど、参ったよ。実はいつもより1時間半も早く出たのに。参ったな」

A「疲れましたね」

Aさんは、聞きながら、遅れも大変だったけど、Bさんの話長くて疲れるなと思ってしまうでしょう。ではどのようにすればよかったのでしょうか。

例を見てみましょう。

A「電車遅れて大変でしたね」

B「そうだね。途中の○○で降りてタクシーを捕まえようとしたんだ。だけど乗れなかった」

A「そうなんですか。じゃあ、どうやっていらしたんですか?」

B「バスの方が早く進んでいたからバスで来た。だけどタクシー1時間も待ったから大変だった」

A「1時間ですか。そりゃあ、災難でしたね」

B「いつもより1時間半も早く家を出たのにな」

会話形式の場合は、文節は2つまでで区切って相手に主導権を返すようにしてください。

ポイントは3つです。

  • 話し言葉も一文を短く切る
  • 接続詞でつながない
  • 文節を2つまでで区切って、相手にパスを出す

管理職・リーダーがコミュニケーションで知っておくべきこと「相手の反応が悪いのはあなたのせいではない」

営業で初対面の人の感じが悪いと必要以上に責任を負う人がいます。

しかし、これは営業マンの責任ばかりとはいえません。

確かに、あなたの態度が悪かったり、気分を害するような身なりをしているならば改善する必要はありますが、そのようなケースは稀です。

たいていは、相手側自身の内面に起因していることがほとんどです。

例えば、話を転換させてあなた自身のことで考えてみましょう。

部下についついつれない対応をとってしまったなんてケースはあるのではないでしょうか。

実はその原因はちょっとしたことがほとんどです。

「部長に呼び出されて、チームの成績不振をなじられた」

「経営会議で使う資料作成をしていたら、常務の一声で、調査しなければならない内容が増えた」

「大口顧客から無理難題を言われた」

「急に不良品が発生し、クレームが起きて対応しなくてはならない」

「急に上司に仕事を頼まれた」

「部下が休んでその分の対応をしなければならなくなった」

「急にお客様から無理難題の依頼メールが入った」

どれもあなたに起因することではありません。それだけではありません。次のような仕事とは関係のないことが要因かもしれません。

「朝、来る前に家族と口論をした」

「通勤電車の車中で。おろしたての新品の靴を踏まれた」

「外出していたら、大雨が降ってきて濡れてしまった」

「どこから知ったのか携帯に興味のない営業電話がかかってきた」

「お昼に食べたラーメンの味が合わなかった」

「乗り換えの電車をホームで待ってたら、ハトに糞をかけられた」

「駅に着いたらスイカが無いのに気づき、家に戻って、先ほど始業時間ギリギリに会社に駆け込んばかりだった」

他にも出る前に家族と口論があったのかも

相手はあなたのことを怒っているわけではありません。

何よりも自分を責めないことです。

表情が硬くぶっきらぼうであったり、愛想のない人も少なくありません。

一見、このような表情を見ると、慌ててしまう人もいるかもしれませんが、焦る必要はありません。

たまたま表情が硬い人なのかもしれません。

初対面で緊張するのかもしれません。

なお、最初に雑談をするのが嫌で、すぐに本題に入りたいという人もいます。

必要以上に考え込まないことです。

 初回訪問の時には感じがよかったのですが、2回目に訪問したらつれない対応だった。もちろん、あなたの会社や商品に興味がなくなったケースはないとはいえませんが、仮にそうだとすると2度目の訪問の約束はできなかったのではないでしょうか。

 このようにたまたま別の起きたことに起因してつれない態度をとっているだけのことは少なくありません。あるいは他に考え事をしているのかもしれません。人は常にベストのコンディションであるわけではありません。体調が悪い場合もあります。

 よって必要以上に落ち込んだり、自分を責めないことです。

 また、相手との距離は一気に縮めようとしないことです。取引の中には性質上、1回限りの面談のものもありますが、たいていは継続的な取引を前提としています。社内においてならもっとそうです。一時的ではなく長期的な付き合いをしていかなければなりません。

 よって、少しずつ距離を縮めていけばいいと考えていきましょう。

 時に雑談も弾まず、相手のことを何も知ることができない場合もあるかもしれません。

 距離が縮まっていると実感できないかもしれません。

 それでも少しずつ縮まっていけばいいのです。

 「ザイアンス効果」という心理学用語があります。人は何度も接触している人に好感を持つようになるという法則です。よって、一見縮まった実感はこちら側にはなくても、相手には生まれているのかもしれないのですから。

管理職・リーダーが意識したいこと「自己紹介は一生懸命やればやるほど逆効果」

一時期、私は異業種交流会やパーティーによく参加していました。

そこには起業家の方やこれから起業をしたいという方が集まってきました。

ある会に参加した時のことです。

参加者は20名ほどでした。何と1人5分ずつの自己紹介をするというのです。ビックリしました。

自己紹介後、その時のメンバーで私が名前と顔を一致させたのは、何とたった1人だけです。失礼な話ですね。

その人は、たまたま自分が困っていたデザインの仕事をしていたからです。

一方で、他の人は自分が何をやっているか、どういう思いでその仕事を始めたのか、人によっては芸を実践する人もいました。

ところが却って印象に残らなかったのです。

残った印象は「長い話だったな」ということだけでした。

このように書くと反論したくなる方もいらっしゃるかもしれません。

確かにパーソナルブランディングは大切でしょう。

でも大切なのは「自分をどのように魅せるか」より「相手にどれだけメリットを与えられるか」だと思います。

かつてガラケーはたくさん機能がついていました。携帯を購入すると一緒についてくるガイドブックを何気なく見たら100以上機能がついていた気がします。そのうちの全部を使っていた方はほとんどいないでしょう。多くても10くらいではないでしょうか。

スマートフォンは初期のアプリはほとんどついていませんが、必要ならいくらでも自分で増減できます。

基本ベースでいうと便利にはなりましたが、機能の数は減ったのです。

この点は自己紹介とも通ずる点があります。

一生懸命やっている長い自己紹介、相手の印象に残らなければ、元も子もありません。

前の項にも書きましたが、人は基本的に「相手の話を聞く」よりも「自分が話をする」ほうが好きです。

よって、いきなり長いこと話をされても、頭の中に残そうとしないのです。

これがたまたま興味があることでしたら別ですが、興味がない場合は逆効果なのです。時にはその人に悪い印象を持つこともあるのです。

私は営業のコンサルティングなども日々していて、アポを獲る際の電話や面談時の商品説明は限りなく短くするようにお伝えしております。自己紹介はできれば18秒以内がいいとされています。

できるだけ簡潔に、相手へどれだけ貢献できるかを伝えればいいのです。

そのうえで、相手の話を引き出していけばいいのです。

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