これから、新しい部下や取引先との初対面で好感を得るコミュニケーションスキルについて解説します。今回は、あえて知らないふりをする雑談術です。雑談で和やかに商談を進める方法、その際の心構え、考え方、実践的なテクニックを解説いたします。
管理職・リーダーが意識したいこと「知っているアピールは逆効果」
かつて在籍した会社での飲み会の時の出来事です。
酔っぱらった別部署の先輩に「○○部長は簿記2級も持っているんだよ。スゴイだろ。お前も会計の勉強したほうがいいぞ」と、部長を前にして言われました。
私は失言をしてしまいました。
実は私は前職の関係で、日商簿記の1級を取得していました。
ただし、経理の仕事に就いたことがなかったので、職歴としては簿記の資格を持っていることを印象づけることは書いていませんでした。履歴書の資格の欄には書いておいたのですが、部長も気づかなかったのでしょう。私も面接官をやっていましたが、そもそも転職面接で面談の際に使う主の書類は、職務経歴書です。
面接した部下の履歴書の内容まで覚えていないのも無理はありません。
そんな時、私は言ってしまったのです。
「私は簿記の1級を持っていますから、会計の知識は大丈夫です」
一瞬、場が凍り付きました。
その時、私は営業が低迷していて、優秀とはかけ離れた状態でしたので、先輩はちょっとしたアドバイスのつもりだったのでしょう。
しかも先輩は履歴書は見ていませんし、普段簿記の話なんかしません。成績が落ち込み焦っていて、何か自分のすごさをアピールしたかった私は、先のように言ってしまいました。
しかし、今なら違う回答をします。
「そうですよね。会計の勉強もしたほうがいいですよね」と。
別にPRして相手の気分を害する必要はないのです。
同じようなこととして、部下や同僚がこんな情報がありますと言われると、「知っているよ」と、話をシャットアウトしていました。
こんなことも知らないなんて部下や同僚に馬鹿にされたくないと思っていたからです。
当時の私のやり取りを再現してみましょう。
同僚「こんな便利な関数もあるんだよ」
私 「知っているよ。たまに使ってるよ(実はよくわからないけど……)」
先輩「鹿島に行くんなら電車よりバスのほうが早いぜ」
私「知ってますよ。でも電車のほうが自分はいいんですよ(バスで行けば東京駅から1本なのは悪くないな)」
出張でお客様のところで、「ここのご当地ラーメンならA店だよ」と薦められると、「知ってます。ネットで見ました」と余計なひと言を言っていました。このようにしていると、誰も情報を教えてくれなくなります。
部下との関係もそうでした。部下に何か教えてもらっても「知っているよ」との一言で済ませていると、必要最低限のホウレンソウしか入らなくなってしまいました。情報が遅く、重要な取引先を他社に奪われることも出てしまいました。
一方で、非常にチームの成績のいいCさん、部下がよく相談に来ていました。
ある時、Cさんの部下がこのように言いました。
部下「Cさん、今度○○社が品川に支店を出すみたいですよ」
Cさん「え!(びっくりした声をあげ、ネットをチェック)本当だ。気づかなかった。教えてくれて助かったよ」
部下「いえいえ」
Cさんはこの時、本当に知らなかったようだったのですが、たまに知っている情報も知らないふりをしていたそうです。知ったかぶりして情報が入ってこないよりは、知らないふりをして情報が入ってきたほうがいいに決まっています。
まさに「能ある鷹は爪を隠す」です。
なお、ここで追加で一言。
あなたの上司や先輩で何度も同じ自慢話をする方がいらっしゃる場合、「その話、前も聴きましたよ」と言ってしまうと気分を害してしまいます。
そんな時は、「その話はいつ聞いても、いい話ですよね。さすが○○部長ですね」で、ほめながら話を終了させてしまうといいでしょう。
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